冬に訪れる鳥たち(2)


〈“アイサ”が名前につくカモ〉

 アイサは、「秋沙(あきさ)」がなまったとされています。「秋」は季節の「秋」ですが、「沙」は「早い」を意味する説と「去る」を意味する説の2つがあります。前者は「秋早鴨(秋早くに渡ってくる鴨)」、後者は「秋去鴨(晩秋~初冬に渡って来る鴨)」とみなせます。西宮(阪神間)での観察では、後者の方が実態に合っている感じがします。


ミコアイサ

ウミアイサ

アメリカヒドリガモ


ミコアイサ
ミコアイサ
ウミアイサ
ウミアイサ
アメリカヒドリとヒドリガモ
アメリカヒドリとヒドリガモ

漢字では「巫女秋沙」。オス(手前)の白い体に黒の筋模様が走る姿を、白装束の巫女に見立てて名づけられました。メス()は、頭が茶色で別種のカモのようです。目の周りが黒色でパンダにそっくりで、最近ではパンダガモと呼んで親しまれています。西宮では、稀に武庫川河口に姿を見せる程度で、とても珍しいカモです。

漢字では「海秋沙」。頭部やくちばしの形がユニークで、愛嬌のある姿をしています。オス(奥の2羽)はカラフルで、頭は緑色、長めの冠毛があります。手前の1羽がメスです。甲子園浜では2~3月の冬最中に、数羽~10羽ほどがやってきます。よく似た種類のカワアイサは、北日本に多く、西宮には来たことがないようです。

手前が本種で、名前の通り(北~中央)アメリカに生息します。「迷鳥」と言って、渡りの際にルートを間違え日本に渡ってくる鳥が居り、本種はその代表です。奥のヒドリガモと比べると、頭部は白色で黒い羽毛が斑点状にあります。頭頂部はより白く、目の周りの緑色の帯が後頭部まで伸びています。甲子園浜では、毎冬1~2羽を見かけます。

 



オカヨシガモ

クロガモ

ヨシガモ


オカヨシガモ
オカヨシガモ
クロガモ
クロガモ
ヨシガモ
ヨシガモ

珍しく雌雄共に地味な色合いで、オス(画面奥)の腹部後端の黒色と、メス(手前)の嘴の周辺部の橙色が目立つ程度です。それだけにしっとりとした落ち着きを感じます。漢字では「丘葦鴨」。ヨシガモに比べると、内陸部の湖沼の葦原によくいることに由来します。内陸部でも実際に見かける数はそれほど多くないのですが、甲子園浜では、近年飛来数が増えてきています。

 

「名は体を表す」と言うようにオスは全身真っ黒。上嘴の付け根に黄色の隆起があるのが特徴です。メスの体色は濃い灰褐色で、頬から喉が白色です。10数年前、夏になっても北国に帰らず、甲子園浜に数年間居ついたクロガモが1羽いました。人気者だったのですが、突然、姿を消してしまいました。またやってきてほしいカモの一つです。

 

漢字では「葦鴨」。水辺の葦原によくいることに由来します。葦が「あし(悪し)」とも読め、縁起を担いで「善し→よし→葭」に代え、「葭鴨」と書くことがあります。オスの頭部はナポレオン帽(近年、自転車用ヘルメットとも言う)を被っているように見えます。尻近くの長い風切羽も印象的で、容姿が良いので「良しガモ」とする説もあります。五ケ池には、毎冬、少数ですが飛来します。

 



オシドリ

シマアジ

ツクシガモ


オシドリ
オシドリ
シマアジ
シマアジ
ツクシガモ
ツクシガモ

オス(画面右)のイチョウの葉型に似た独特の風切羽が印象的で、左がメス。仲の良い夫婦を「鴛鴦(オシドリ)夫婦」と言いますが、実際には毎年相手は替わっています。市内に固定的な飛来地はなく、咋冬は阪急仁川駅近くの弁天池に来たようです。国内に留まり、冬(里の水辺)と夏(山地)とで住みかを移す漂鳥です。大好物はドングリ。

 

魚と勘違いしそうな名前で、漢字では「縞鯵」ではなく「縞味」です。「縞」は、目の辺りから後ろに伸びる白い眉斑や、背中から脇に伸びる白と黒の肩羽の筋模様に由来します。「味」は、本種やトモエガモ、ヨシガモ、マガモなどは食べると美味しく、「味鴨」と称されることに由来します。2年ほど前に甲子園浜に飛来しました。

 

名前は、九州北部(筑紫地方)の有明海に多いことに由来します。有明海の干拓・埋立てが進み、越冬地を他所に移すものが現れ、数は多くありませんが大阪南港や尼崎港にやってきます。10年ほど前、甲子園浜に姿を見せたことがあります。からだは雌雄ともに黒緑、白、赤茶の3色にくっきり色分けされ、嘴は赤色です。嘴の付け根に白色の線があれば、メスです。